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「馬鹿なこと言わないの!!あなた……3年前のこと覚えてないの??」 あまりの声の大きさに隣の犬が鳴き始める。 覚えてるよ。 覚えてますとも!! それはもう昨日のことのように覚えていて。 あの悔しさを糧にこの三年間生きてきたと言っても過言ではないぐらいだ。 むしろ約束を覚えてないのは母のほうで。 でも母がそれを忘れるのも想定内。 ポケットから紙を取り出して床に広げて叩きつける。 「これが3年前、母さんが出した旅への条件です」 血判状かのように拇印を押させた書面を提示して。 超難関高校に入学し、荒い言葉遣いを治して母の機嫌をとった。 それに早朝からバイトをして旅費を貯めたことを思って母を見上げる。 「約束は守りました。私、旅に出ます」 キッと睨み付けると僅かに狼狽えて。 よし。 もう一押し。 そう思って今度は夏休みの宿題を玄関に並べた。
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