ふたりきり

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長い、長い1日が終わり、俺は静まり返った家の居間で、ボンヤリと座り込んでいた。 ほのかに漂う線香の香りと、どこかヒンヤリとした空気。 まるで、自分の家じゃないみたいな違和感。 これから、誌乃とふたりきり。 頼れる親戚もなく、本当にやっていけるのだろうか。 急に襲い掛かって来た現実と不安からか、俺の頬を涙がつたう。 そこでようやく、泣くのを忘れていたんだと気が付いた。 俺の身体は震えだし、タガが外れたかのように、涙が溢れて来る。 昨日までの当たり前だった日常は、もう二度と、…戻らない。 カタッ… その微かな物音に、俺は思わず振り返った。
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