ふたりきり

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「……誌乃…」 一緒に寝ていた筈の、誕生日に買って貰ったウサギの縫いぐるみを抱えながら。 誌乃は不安そうに立っていた。 「……どうした? 眠れなくなったのか?」 俺は慌てて涙を拭い、おいで、と手招きをする。 ゆっくりと俺の側に来た誌乃の手を掴み、腕の中に収めた。 「……これからは、お兄ちゃんとふたりきりだ。 寂しくても、辛くても、ふたりで頑張ろう。 お前は、…俺が守ってやるから 」 心配ない、大丈夫だと。 自分にも言い聞かせるように。 「……私、…がんばる、から…」 そう言った後、誌乃は安心したのか、ようやく少しだけその表情を和らげた。
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