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この日を境に、誌乃は子供らしくなくなった気がする。
進んで家事を手伝い、ベッタリと甘える事もなく、笑顔も前より小さくなった。
聞き分けも良く、欲しいものも滅多に言わない。
学校で金が必要な時ですら、遠慮がちだった。
両親の保険金や、事故の見舞金はあったけれど。
大学生だった俺は、家庭教師のバイトもして、とにかく誌乃に不自由させまいと必死だった。
あの頃は気付かなかったけれど、今にして思えば、誌乃は俺の顔色を伺うように。
色んな思いを我慢していたのだろう。
私を捨てないで。
いい子にしてるから。
そんな風に…、
自分を抑え込みながら。
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