矢野家

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「 誌乃ちゃん、お兄ちゃんが迎えに来たわよ 」 矢野家の玄関先で。 おばさんが奥に向かってそう呼び掛けると、はーい、という声と共に誌乃がパタパタと駆けて来る。 「 ああ、これも忘れずにね 」 おばさんが差し出したのは、惣菜の入ったタッパー。 「 いつも、本当にすみません 」 そう言って頭を下げる俺に、いいのよ、とおばさんは手を振る。 「 誌乃ちゃんが手伝ってくれるから、おばさん、大助かり 」 靴を履き終えた誌乃は俺を見上げ、照れたように小さく笑った。 「 あ、何だ。もう帰るとこか 」 ちょうど帰宅したおじさんに、またな、と頭を撫でられ、誌乃は、さようなら、と手を振った。
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