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「……誌乃は?」
他の同級生と話していた陸にそう聞くと、
「 トイレに行くって…」
と辺りを見渡し、あ、来た、と指を差した。
俺もその方向を見ると、誌乃は一目散に駆けてきて、俺に抱き付いた。
ぎゅ、と。
しがみつくように。
何か言いたそうでもあるのに、無言で俺を見上げるその表情は、かつてない程に不安そうで。
「……誌乃?どうした?」
そう聞いても、誌乃は今にも泣き出しそうにしながら、ただ小さく首を振るだけだった。
あの話を聞いてしまったとも知らず、俺はそんな誌乃の頭を撫でながら、大丈夫だよ、と何度も繰り返す。
誌乃はそれからも、俺から離れようとはしなかった。
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