0人が本棚に入れています
本棚に追加
私たちより二つ年上の代に山田先輩という先輩がいた。地元では喧嘩が強いことで有名で、話の通りそのまま、めっぽう強く、二つ上の代では最強の内の一人に数えられる。
5月、新緑の眩しい季節のある週末の夜、滋賀という友人が山田先輩に「なんとなく気に入らない」とか何とかの理由で滋賀らグループが溜まっていた場所から呼び出され、その場でぶっ飛ばされた。
滋賀はどちらかと言えば、地元で有名なあの先輩集団に対して、明るく接するタイプではなく、畏怖するというような態度で、遠慮しながら接するタイプだった。よく言えば媚は売らないタイプである。その態度が山田先輩の目に障ったらしい、ともかく運が悪かった。
翌日あっという間にその噂は私たちのグループに広まった。
週が明け、滋賀は学校に登校した。
滋賀は目の回りに真っ黒な痣を作り、前髪を目の下まで垂らし、肌色の女性用ファンデーションを塗りその痣を隠していた。滋賀の元々の顔立ちは、目が大きく二重で少し切れ長の目を持ち、彫りの深い、ある意味では風情のある顔立ちだ。女子から人気があった。しかしその顔は腫れ上がり、歪んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!