少年時代

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 もう一人、川口という友人がいる。  その川口が 「なあ林君、山田先輩をやりにいこう、これはやらないとダメだ。」と言った 「分かった。」 「二対一なら勝てるだろう。山田先輩には『自分達は弱いんで、二対一でやらせてもらいます』と言おう。」 「そうだな。それなら勝てる。」  私は喧嘩はしない方だが、グッチは喧嘩が強い。学年では最強の部類に入る。これなら勝てる。  そして準備は進んだ。川口の通う学習塾の先生がその昔、どヤンキーだったということで、その先生は当時33歳くらいだったのだが、棘の付いたメリケンサックや木刀を貸してくれた。  メリケンサックなど使ったことはなかったが、これで殴ったらどんな感触がするんだろう?という考えが頭をよぎったりした。 「先ずは俺が突っ込んで先輩の機先を制するから、そのあと先輩が怯んでいるうちに、グッチがやるという作戦でどうだ?」 「うん。そうしよう。」  当時付き合っていた恵にもその事を伝えた。 「うん。分かった。頑張ってね。」 「分かった。」  いよいよその日は近づいていた。しかしその計画に待ったがかかった。理由はこうだ。もし今回、川口と私が山田先輩をやったとしたら、二つ上の先輩たちと戦争になる。そうなった場合、武党派揃いの集団に私達中三の集団は九割方勝ち目はないであろ。  仲間の中には 「戦術では勝つが、戦略では負けそうだ。」  などと真面目に腕組みして考えるヤツなども出てきた。  私達のグループには「洒落にならないぞ」という空気が立ち込めた。  今回シメられた滋賀であったが、滋賀も 「いや、行かないでいいよ」  と言っていた。  結局、話は取り止めとなった。 終わり。
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