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まだちょっと焦っている様子の翔さんは、Tシャツを引っ張って私の目からこぼれた涙をそっと拭う。
むう、と口を尖らせてみるけど。
……昨夜ずっと包まれていた、翔さんの匂い。
それだけで脳髄が甘く痺れて、どうにかなってしまいそう。
自分のこの豹変ぶりに、自分でも眩暈がしそうだった。
もっと、困らせたい。
もっと、焦らせたい。
もっと、私のことだけ考えればいい。
今まで知らなかった自分がボロボロ出てきて、止まらない。
「真琴、それについてはちゃんと説明しようと思うよ。でも、うまく言えるかどうか……」
「……うー……」
駄々をこねるように、涙声で抵抗を続ける。
嫌われないか心配にもなるけど、翔さんがどうやって私をあやしてくれるのかが見たかった。
……私、わがままなんだな。すごく。
これまで抑えてきたぶん、一気に噴き出してきたみたいだった。
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