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私にはおじさんの名前までは判らないけど、昔から何度も会っている。
狭い町内だから、職人のおじさんはこの辺の子どもの顔なんて知り尽くしていそう。
「おはようございます」と言いながらペコリと頭を下げると、なぜか「おおー」と言われた。
そのまま手を繋いでいることをからかわれた。
翔さんはそんなことあまり気にしていない様子で厨房の中を覗き込む。
「徳さん、今日、アイツは?」
「ん? ああ、アユなら今着替えて……おお、アユ、こっち来い!」
徳さんと呼ばれたおなじみのおじさんは厨房を振り返ると、奥にある銀色のドアを開けて入って来た男の人に向かって手招きをする。
「なんですか、徳さん」
抜けるような真っ白な肌に、白衣。私は見たことないけど間違いなく“わしづか”の若手の職人さんだと思う。
「……ん?」
思わず二度見をした私に、翔さんはフフ、と笑った。
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