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「え……?」
「判った?」
アユと呼ばれた男の人は、呼ばれて来たものの何のことか判らないという顔で、翔さんと徳さんの顔を交互に見る。
翔さんはおかしくてたまらないというように、笑いをこらえながらアユさんに手を伸ばす。
「おい、歩夢(アユム)。お前のせいで、俺、女と二人で歩いてるって誤解されたぞ」
「あっ」
翔さんは、アユ改め歩夢さん(だって私にとってはそうだもん)の頭の三角巾をスルッと取ってしまう。
一緒に中のヘアバンドも取ってしまったようで、オールバックに整えられていた歩夢さんの黒髪がパラ、と乱れて落ちる。
「やだ、何すんの、翔サン」
「……!」
男の人の、独特の妙なニュアンスの裏声と、その話し方。
私はようやくすべてを把握した。
……あの時翔さんと一緒にいたのは、このひとだ。
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