また、日常の幕開け

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   ……歩夢さんは、いわゆる“オネエサマ”で。  私が見かけたあの日は、昔から“わしづか”でお菓子を仕入れている茶道の家元さんに呼ばれて、注文を伺いに行っていたのだそうだ。  まだ厨房の中の仕事を完全に任されているわけではない翔さん。そのサポートに、翔さんより1年早く修行に入っていた歩夢さんがついていったのだそうだ。  これまではずっと徳さんが注文を請けに行っていたんだけど、“わしづか”の跡取り息子が修行を始めていることをようやく聞きつけた家元さんが「顔を見てみたい」と翔さんを指名した──ということらしかった。  まあ、ゆくゆくは翔さんが切り盛りしていくお店なんだ。  そういう流れがあってしかるべきなのかな、と納得はできた。 「でも、なんでそんな大事なお客様のところに、男の人が女の人の格好をして……」 「お前、知らないの」 .
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