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「あの時、円香をあの部屋に置き去りにしてさ。なんか、バカみたいだけど。本当の俺? そういうのも、そこに閉じ込めて置いてきた気がすんだよな」
「大輔……」
判る気がする……なんて。そんな簡単には、言えなかった。
「女の子とか、好きだよ。可愛い娘見たらやっぱり、ドキッとしたり嬉しかったりするけどさ。でも、そんだけ。なんか……受け付けない」
「円香以外は……ってこと、だよね……」
「うん。無理に忘れようとか思ってるんじゃないんだけどさ。このトシでそんなん言ったら、笑われるだけって思うんだけど。もうオレの人生にそういうこと、ないかもなって……そう思う」
グシャ、と手の中の袋を無理やり潰して、大輔は私を振り返る。
その顔は、笑ってた。
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