また、日常の幕開け

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  「全部、円香に使ってやるために用意された経験だったんだなって。そう思ってた」 「それは……円香に言ってあげたこと、あったの……?」 「いや……」  大輔はすっかり小さくなったごみを、キッチンの大きなごみ箱に放り込んだ。 「そんな重いこと言って、引かれんのが怖かったって言ったら、笑う?」 「大輔……」  そんなに好きなら、1年も何してたの、と思う気持ちも確かにある。  だけど、好きだから言えないこと、できないこと……。  あるんだよね。自分が一番、よく判っているのに。 「……それ、言ってあげたらよかったのに……」 「……」 「言ってあげたら、円香、泣かなかったかも知れないのに。大輔、バカだね」 「……うん。自分でも思う。実は大バカかなって」  肩をすくめて、大輔は私に背を向けて笑った。 .
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