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どのくらい経っただろうか。
何も聞こえない、ここは…
「…や……くや…朔夜」
「ん、んん…」
巽が必死に朔夜の名前を呼んでいる。
朔夜はうっすらと目を開き、
巽を見た。
「ここ…は?…ッ!!」
朔夜は体を起こそうとするが
なぜか力が入らず、その場に倒れ込む。
「無理すんな、俺も結構辛かったから」
片膝を立て、腕をだらんと乗せた状態の巽は「はぁ…」と溜め息をついた。
「巽…」
周りを見回すと、
辺り一面、鏡、鏡、鏡。
目の前にはどこまで続くのかわからない一本の道しかない。
「俺達は、恐らく《血》を吸われて気絶し、鏡の中に入れられた…脱出方法もわからねぇ」
巽は考え込むように呻りをあげる。
朔夜はしばらく横たわっていて、動かない体で目だけを動かし、周りを観察していた。
「……おい、巽!なんか聞こえねぇか」
ふと耳を澄ませると、それは
微かな音だったが、徐々に近づいてきてるような音が聞こえた。
「…?そうか?」
巽は耳を澄ませるが聞こえないのか、首を傾げる素振りを見せる。
<コツッ…コツッ…>
また、音が聞こえる。
今度ははっきり聞こえた。
こっちに向かって音が近づいてくる。
「お、おいおい、朔夜」
あまりの不気味さに、巽は
朔夜に引っ付く。
「くっつくな、巽」
嫌がる素振りを見せるが巽を見ることはせずに音が聞こえる方をジッと見ていた。
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