1ずれ

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眠い目を擦りながら 僕は自分の部屋のドアを開け ベッドに潜り込んだ。 いつもと変わりない朝だった。 机には数学の問題集が 開きっ放しになっていた。 僕は、昨夜のことを鮮明に覚えていた。 制服に着替えて部屋を出て 僕は向かいの祖母の部屋のドアを見つめた。 ノブを握り ゆっくりとドアを開けた。 そこには 足の折れたソファーや 古いステレオ 弦の錆びたギターや 色褪せた食器棚などが 隙間なく積み上げられていた。 全てのがらくたが うっすらと埃を被っていた。 砂漠など何処にもなかった。 夢だったのだ。 僕はそう考えた。 或いは ただの見間違いか。 扉の向こうが別世界になっているなんてのは 映画や小説の中だけのことだ。 ここは現実の世界だ。 そんなことある訳がない。 ただ単調で退屈な日常が 果てしなく繰り返されるだけだ。
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