32人が本棚に入れています
本棚に追加
‡
――ガチャッ、
陽向「ふあ……よく寝た――って、なにやってんだ?」
リビングに入ってまず目についた光景は、奏と優花が抱き合うようにして体を寄せ合い、顔を真っ赤にしてこっちを見ているという、まったく状況が把握出来ない状態。
陽向「……奏?優花?」
奏「あ……よ、よく寝てたみたいだね?」
陽向「ああ……なんか落ちてたみたいだ。ふぁ……」
優花「ほんと、ヒナ兄って無防備だね?」
陽向「は?」
優花「えいっ!」ドンッ
奏「ひゃっ!?」
陽向「んなっ!?」
――ドサッ、
突然背中を突き飛ばされた奏は、止まる事も出来ないまま俺にぶつかり、不意を突かれた俺は彼女を受け止めながら後ろ向きに倒れた。
――ガンッ!
陽向「な”っ!?」
奏「陽向!?」
……後頭部を壁に強打した。頭をさすると、なんかタンコブでも出来たような腫れを感じる。
というか、軽い脳震盪が……ああ、クラクラする。
奏「陽向、大丈夫?すごい音したよ?」
陽向「お、おう。……心配するなら、体勢戻させてくれ。正直きつい」
奏「えっ……あ、ごめん。すぐ――」
俺の上から退こうとした奏は、横目で何かを見たのかハタと固まった。
その視線の先を追うように見ると、変わらぬ表情の優花。
――なのだが、どうもおかしい。……確か、優花がこういう違和感を感じさせる表情を見せる時は、決まって何かが起こる。
悪感というのか、そういう類の――あ。
とある節に思い当たるのと、目の前に奏の顔が近付いてる事に気付いたのは、ほぼ同時。
なんとも有耶無耶の内に、俺は彼女からキスされた――という事。
‡
最初のコメントを投稿しよう!