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§優花side§
優花「………………」
――盗み聞きするつもりじゃなかった。けど、お風呂があいた事をヒナ兄に言いに来たら、お姉ちゃんの部屋のドア越しに……躊躇させるような、そんな空気がひしひしと伝わってきた。
……2人から聞いてはいたけど、お姉ちゃんのお爺ちゃん……大丈夫なのかな。
優花「(……心配しない方がいいかな?)」
事情を知らない、その場に居なかった私が懸念した所で、それが解決するワケじゃない。
私はまだ、2人のように『何か』を体験した事がないけど、この場合、私がとるべき行動は――
“いつも通りでいる事”……かな。
優花「…………」
頭を振り、私は自分の部屋へと向かう。
ドアを締め、ベッドに仰向けに寝転がり、お気に入りのイルカの抱き枕をギュッと抱きしめる。
優花「……………………」
……ヒナ兄とお姉ちゃん、本当に……お似合いだよね。
境遇が似てるとは言えないけど、近からず遠からず。たった1年で……私じゃ入り込む余地のない関係に見える。
――本当に、羨ましい。
――本当に、あんなに想ってもらえる、お姉ちゃんが羨ましい。
私の方が先に好きになったのに、月日は関係なく、ヒナ兄のそばにいるのは――お姉ちゃん。
私じゃなく、お姉ちゃん。
半ば無意識に、腕に力が入る。イルカがちょっと曲がったけど、枕だから大丈夫。
優花「…………はぁ」
……私、なんか最低な女になっていく気がする。
好きな人の彼女を勝手に嫉妬して、
そのくせ、気持ちは押し込んで。
優花「はぁ……最低だなぁ、私……」
憂鬱すぎる溜め息の残滓が、ハッキリと形を模した。そんな気がした――
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