第一話 【EARTH】

16/30
前へ
/54ページ
次へ
パタ、パタ、パタ。と、床を踏み鳴らし、一人の少女が教師の横に歩いてきた。 「えー、この人が、芽生さんです。皆さん、仲良くしてくださいね。」 皆は、改めてその少女をまじまじと見た。 背はあまり高くない。が、小柄というほどでもない。 少し茶色が入った長い髪は、ポニーテールにしていた。 顔立ちはさっぱりとしていて、どこか大人びた印象だった。 その少女は、驚くほど無表情だった。緊張しているのか、愛想笑いすらしない。 それを見かねた教師が言った。 「あ、芽生さん。皆に何か言いたいこととかはありませんか?簡単な自己紹介とか…。」 その言葉に、少女──芽生は、長い沈黙のあと、瞬きをしてから、口を開いた。 「……速水 芽生です。」 それからは、また沈黙。 あちこちからヒソヒソと話し声が聴こえてきた。 「えー、」 そこで教師が手をパンパンと鳴らして、皆を静めた。 「それでは、芽生さんの紹介を終わります。では、芽生さん。席について貰いたいのですが…芽生さんは、どこか希望する席などはありませんか?」 教師が芽生に席を選ぶように促した。すると、芽生は左手をスッと挙げ、一直線にある場所を指差した。 「…彼の席の隣が…いいです。」 指差した先には、先程から窓の外ばかりを見ていて状況が全く理解できていない、キョトンとした拓海の顔があった。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加