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パタ、パタ、パタ。と、床を踏み鳴らし、一人の少女が教師の横に歩いてきた。
「えー、この人が、芽生さんです。皆さん、仲良くしてくださいね。」
皆は、改めてその少女をまじまじと見た。
背はあまり高くない。が、小柄というほどでもない。
少し茶色が入った長い髪は、ポニーテールにしていた。
顔立ちはさっぱりとしていて、どこか大人びた印象だった。
その少女は、驚くほど無表情だった。緊張しているのか、愛想笑いすらしない。
それを見かねた教師が言った。
「あ、芽生さん。皆に何か言いたいこととかはありませんか?簡単な自己紹介とか…。」
その言葉に、少女──芽生は、長い沈黙のあと、瞬きをしてから、口を開いた。
「……速水 芽生です。」
それからは、また沈黙。
あちこちからヒソヒソと話し声が聴こえてきた。
「えー、」
そこで教師が手をパンパンと鳴らして、皆を静めた。
「それでは、芽生さんの紹介を終わります。では、芽生さん。席について貰いたいのですが…芽生さんは、どこか希望する席などはありませんか?」
教師が芽生に席を選ぶように促した。すると、芽生は左手をスッと挙げ、一直線にある場所を指差した。
「…彼の席の隣が…いいです。」
指差した先には、先程から窓の外ばかりを見ていて状況が全く理解できていない、キョトンとした拓海の顔があった。
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