第一話 【EARTH】

5/30
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
──キーンコーンカーンコーン……… チャイムが授業の終わりを告げる。教師は無言で教室を出ていった。 時刻は3時を過ぎたところ。これから皆、部活動へ行くのだろう。 拓海はゆっくりと立ち上がり、教室を出た。 拓海が所属しているのは美術部。まあ、活動が活発ではないので、帰宅部同然の扱いなのだが。 「拓海君!」 ふいに後ろから声をかけられる。振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。 「もう、一人で帰るなんて、水くさいですよ?」 「優海……。」 【優海】と呼ばれたその少女は拓海の横について歩き出した。 「あの、今日の晩御飯、何がいいですか?」 「ああ…コーヒー。」 「もう…そんな体に悪いものばかり飲んじゃダメです!」 「…わかったよ。」 彼女の名は【蘭 優海[アララギユミ]】。拓海の親友(?)だ。 拓海が優海と出会ったのは、小学生の頃。優海が自分の家の隣に引っ越してきたのが始まりだった。 両親を幼くして失った拓海は、他人と接することが極端に苦手だった。 しかし優海だけは、拓海がどんなに自分を拒んでも、拓海と仲良くしようとし続けた。 その甲斐あって、拓海は何とか、他人と接することができるようになった。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!