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──キーンコーンカーンコーン………
チャイムが授業の終わりを告げる。教師は無言で教室を出ていった。
時刻は3時を過ぎたところ。これから皆、部活動へ行くのだろう。
拓海はゆっくりと立ち上がり、教室を出た。
拓海が所属しているのは美術部。まあ、活動が活発ではないので、帰宅部同然の扱いなのだが。
「拓海君!」
ふいに後ろから声をかけられる。振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。
「もう、一人で帰るなんて、水くさいですよ?」
「優海……。」
【優海】と呼ばれたその少女は拓海の横について歩き出した。
「あの、今日の晩御飯、何がいいですか?」
「ああ…コーヒー。」
「もう…そんな体に悪いものばかり飲んじゃダメです!」
「…わかったよ。」
彼女の名は【蘭 優海[アララギユミ]】。拓海の親友(?)だ。
拓海が優海と出会ったのは、小学生の頃。優海が自分の家の隣に引っ越してきたのが始まりだった。
両親を幼くして失った拓海は、他人と接することが極端に苦手だった。
しかし優海だけは、拓海がどんなに自分を拒んでも、拓海と仲良くしようとし続けた。
その甲斐あって、拓海は何とか、他人と接することができるようになった。
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