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今、触れた。
いや、彼女は、私の腕に触れたはずなのに、触れられた感触は無く、確かに、私の目の前で、彼女の手が、私の手をすり抜けた。
感触もなく、私の腕をすり抜け、彼女に視線を戻すと、彼女の両手が、私の方に突き出されていた。
「ほ~ら。宮田さんの脳みそ、ナデナデしてあげる」
イタズラっぽく笑う彼女の両手は、確かに、私の頭に触れてる距離なのに、なんの感触もなく、今、本当に、私の脳を撫でているらしい。
咄嗟に私は走り出し、走って走って、我が家へと走り切り、家の前で振り返るが、そこには誰もいなかった。
どうやら追って来ては無いらしいと、安心して、荒い息で両膝に手をつく。
アレは紛れも無く、本物の幽霊。
まさか、幽霊の心配して、声を掛けるなんて。
幽霊に見えなくたって、実際、私の腕をすり抜けて、頭の中に手を突っ込んで来た。
もちろん、腕に触れないって事は、脳を撫でたわけじゃなく、あれは彼女なりの幽霊ジョークなんだろうけど。
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