夏が終わる、水曜日。

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「あ~あ…」 「ん?」 仕事は忙しく、嬉しい悲鳴をあげている今日このごろ。 そんなだから、僕達が二人きりで合うなんて久々で。 「夏が、終わっちゃうね…」 「あー…そだねぇ」 何にもない、燦々とした陽が射し込む部屋で、二人はソファーに腰掛けていた。 「エアコンさ、切っちゃおうか」 「え、何で?」 「窓開けた方が涼しいよ、多分」 外を見る。秋空に混じって、入道雲が窮屈そうにその身をよじっていた。 側ではさらさらと、風が木の葉に手招きしている。 「あー…本当だねー…」 「ね?たまにはさ、自然の風でエコしようよ」 「ふふ…なぁに、それ!わざとらしいなー」 バルコニーに、椅子を2つと文庫本。君はコーヒーを持って、日陰でぼんやり… …こんな日も、 「良いかも知れないねー…」 「ん、そだねぇ…」 柔らかな風が頬をなぞる。 雲は形を変え、やがては鱗雲に。 オレンジ色の空になるまで、君と二人、 「ねーねー」 「ん?」 「今日ってさぁ、何曜日だっけ」 「…あー…えっとね、確か水曜日」 「ふーん…」 こんな日も、なかなか良いじゃないか。 ~夏が終わる、水曜日~
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