幸せなんて、そんなもの。

2/2
前へ
/4ページ
次へ
とろとろと春の日射しが窓をすり抜ける。 日射しの先には、文庫本を意味なく捲る私と、貴方。柔らかな風に身を委ねながら、ゆっくりとカップを口に運ぶその姿に、思わず見惚れた。 しばらく見ていると、コーヒーカップをかき混ぜる貴方の右手がふと止まり、私の瞳を覗き込む。 「…どしたの、じーっと見つめて。…そんなに僕のこと、好き?」 そう言って私の頭をくしゅくしゅと撫で、悪戯っぽく微笑う。 赤くなった顔を見られぬよう、貴方に、顔を背けながら呟いた。 「別に…ただ、何か…」 「?」 私はいつもこうやって、貴方にからかわれてばかり。 だからこれは、せめてもの異種返しよ。 「…貴方と居ると、幸せだなぁって」 「!!…」 くるりと貴方の方を向いて、にこりと笑って見せる。 今度は貴方が、顔を背ける番だった。 「そ…だね。僕も幸せ」 耳まで染まった赤い顔。少し、満足した。 ~幸せなんて、そんなもの。~
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加