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扉が開く。明るい夜が二人を迎えた。
悠然と歩く二人は真っ直ぐに車道へと出る。
交通量は多く、二人の元にも車が接近していた。
突然出てきた人影に盛大なクラクションが鳴る。次いで響いたのはブレーキ音ではなく――純粋な爆発の音だった。
車は後輪を浮き上げたままの状態で爆炎を上げていた。エンジン部分には男の腕がめり込んでいる。
衝突の衝撃にも男は微動だにしていない。服の袖が焼け落ちるも、男の肌には傷一つつかなかった。
「さぁ、始めよう」
悲鳴を上げ、逃げ惑う人々のなか、男は裂けるように笑う。その腕は闇に包まれていた。
――少女は歌い続ける。爆音も悲鳴もそのすべてをかき消すように。
誰にも届かない歌を少女は歌う。
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