平穏な日常の終わりと波乱な日常の始まり

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「あ~ん、二日ぶりの晶の匂いだよ~」 有紀はだらしなくヨダレを垂らしながら幸せそうな顔で僕の胸板にマーキングするかのようにすりすりと頬すりをしてくる。 「お、おい!離れてってば」 男子は血の涙を流して羨ましがっているが、されてる側としては恥ずかしいだけだし、むしろ人の前だなんて公開処刑もいいとこだ。それに有紀は―― 「まだ充電中~」 「うおは!?」 あんたは機械か!と、ツッコミを入れる前に有紀が足まで絡ませてきて僕は代わりに情けない声を上げてしまった。 …そして男子たちの視線は足を絡めることにより露わになった有紀のむちむちな太ももに釘付けになる。 「ほらほら、入り口でこんなことしてると邪魔になるって」 僕は有紀を無理矢理引き剥がして立ち上がる。 制服に付いた埃を手で払いながら有紀に視線を送ると、有紀はしょんぼりと落ち込んでいた。 「……意外と市瀬君の方が受けなのかな」 有紀にフォローを入れようと床に座り込む有紀に手を差し伸べようとした時、偶然聞こえたクラスメートの女子の一言に戦慄した。 差し伸べようとした僕の手はそのまま固まったように動かなくなる。 「……?」 高梨有紀……僕の数少ない友達の中にこいつも含んでいる……ちなみに男だ。 有紀は女子の制服を着ていて女子の中でも群を抜いて可愛いが、間違うことなかれ……正真正銘、男だ。 無論、アレが付いている(分からないならそれでもいい……世の中、知らなくてもいいことなんて山ほどある) 有紀は日常的に男子から告白されているが男なんだ……男なんだよおおおお 「…はあ」 「なんで今俺の顔見てため息ついたの!?酷いよ!」 何故か鉄平のやつが傷付いてるが……知らない。勝手にショックでもショッカーでもしてればいいさ。 僕は自分の席につく。そして、その後ろの席に有紀が座る。鉄平も僕の右隣の席に座るが… 「なんでため息をついたの!?」 うるさいなあ… 「お前が鉄平だからさ」 よし、これで鉄平は自分の存在意義について考え始めるだろう。 「俺が俺だからって……うーん……俺って一体なんなんだ……」 予想通り、BAKAは頭を抱えて悩み始めた。
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