平穏な日常の終わりと波乱な日常の始まり

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「ボク…忘れない。晶の匂いを」 さっきので僕の匂いが移ったのか、有紀は自身の長い黒髪を頬を赤く染めながら夢中で嗅いでいる……僕って体臭強いのか…? 「嗅がないで」 無駄かもしれないけど声をかけてみた。 「くんくん……はあ~」 うん、やっぱり聞いちゃいないや。 「んで、晶!一大イベントが――」 大いに悩んだ末、結局諦めた鉄平の言葉を遮るようにチャイムが鳴り響いた。 「………………あき――」 ―ガラっ 「よーし、お前ら席につけー!私語は厳禁だ」 チャイムが終わる頃を見計らって鉄平はまた喋りだしたが、それを遮るように担任が教室に入ってきた。 「……」 「野郎共に朗報だ!今日は転校生が来てるぞ……しかも、とびっきりの美少女さ!おーい、入ってこーい!」 担任の合図とともに教室に女子が入ってきた。 「うおおおお……!!」 途端に男子達の感嘆の声。中には性的な目で見つめる者もいる。 しかし、僕は絶句してしまった。 何故なら今教壇に立っているのは…… 「栗原亜由美……よろしく」 父さんの狂言が本当ならば写真に写っていた僕の姉候補の一人だったから。 「お゙れ……知ってだのに…ぐすっ……晶を驚かすのはお゙での役目だっだのに…!」 隣が涙やら鼻水ですごい顔になっている…… 担任に勧められるがまま栗原は空いてる席に座る。僕とは四つ席が離れている。 担任は連絡事項を伝えるだけ伝えると早々に教室から出て行った。 早めにホームルームが終わり、一限目が始まるまで十分ほど時間がある。ということはだ…… 「ねえねえ!栗原さんの前の学校ってどこ?」 「スリーサイズは……」 やはり恒例の質問責めの時間になった。 「晶は行かないのか?」 父さんにどう問い詰めようか考えていると鉄平に声をかけられた。 「いや…僕は姉さんしか興味ないから」 「ボクは晶にしか興味ないよ!むしろ、愛し――」 「そうか。てか、鉄平は行かなくていいの?」 「行かねーよ。俺は麻奈美一筋だからなっ!」 鉄平はニヤニヤ笑っていて、有紀はなんかクネクネ動いて自分だけの世界に入り浸っている。ちなみに、麻奈美というのは鉄平の実の妹だ……残念ながら鉄平の妄想ではない。麻奈美という人物はちゃんと実在している。 「見下げ果てたシスコン野郎だな」 「自分のことを棚に上げておいてその言いぐさはあんまりじゃないですかね!?」
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