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……荷物をすべてこれから栗原の部屋となる空き室に運び終えた頃には、日は沈みかけていた。
「はあ~疲れた」
僕は力なく廊下に倒れ込む。
「男のくせにこれくらいでへばるなんてだらしないわね」
悪かったな貧弱で。帰宅部だからというわけではないがこっちはロクに鍛えてないんだ。
「そう思うなら少しくらい手伝え……手伝ってくださいよ」
「私、箸より重たいものは持ちたくないの」
どこのお嬢様だよ!
「…みんな遅いわね。どこで油売ってんだか」
「みんなって……?もしかして写真に映ってた人達……ですか?」
「それ以外に誰がいるってのよ」
……どうやら、父さんの狂言が現実になりつつあるぞ……
「いふぇ」
試しに自分で頬をつねってみたが普通に痛い……うん、夢じゃないや。
「ただいまー」
下から我が愛姉もとい女神の声!
僕は急いで玄関まで駆けつけた。
「おかえり、姉さ…………ん?」
「お久しぶり、晶君」
姉さんの隣に見慣れない……いや、写真に写ってた黒髪の長い綺麗な女性が僕に微笑んだ。
目元にあるホクロが色っぽい。
「…………はっ!?」
いかんいかん。
思わず見とれてしまった。
えと、挨拶って……え?
「久しぶりって……?」
「滝川愛よ、覚えてないかな……あたしはずっと前から晶君のこと知ってるけど……ふふ」
「……んー……おかしいな、これだけ綺麗な人…一度見たら忘れようがないけど……」
……んー……おかしいな、これだけ綺麗な人…一度見たら忘れようがないけど……
「……ぅぅ」
ふと前を向くと姉さんが半泣きになっていることに気付く。
「え?姉さんどうしたのさ……!?」
わけがわからない。
「うわー……タラシ発言とか引くわー」
栗原はゴミを見るような目で僕を軽蔑してるし。
「………………もしかして、僕声に出てた?」
すると、姉さんはこくこくと頷き、栗原には無視された。
「ふふ…」
滝川さんはただ微笑んで僕を見つめていた。
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