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変わらないものなどあるのだろうか?
小さい頃に誰かにそう訊かれた。
その頃の僕は意味もよく解らずにあるよ、と言った。
その誰かは最初驚いたような顔をして、その後は僕を見て、優しくただ微笑んでいた。
その誰かとは出会って数日で会わなくなった。
僕が引っ越したからだ。
その人の顔は覚えてない、覚えているのがその人は年上の女の子だったということだけだ。
十年以上も前の出来事だ。
――――――――――――――
「ハア……ハア……ハア……ッ」
僕は無我夢中で走った。
「ハア……!ハア……!」
息を切らしながら僕は急いで階段を駆け上がる。
「ハア……!ハア……くっ!」
破裂しそうなくらい心臓が痛いがいちいち気にしてる時間はない。
『市瀬様のご家族の方ですか?実は――』
病院から電話がかかってきて嫌な予感がした。そして、それは当たっていたのだ。
「あ!こ、こら!危ないから廊下を走らないでください!」
若い看護師さんに注意を受けたが、こっちだって急いでるんだ。
もう少しで父さんの病室なんだ。文句なら後でいくらでも聞くさ。
「父さん…ッ!」
僕は乱暴に個室のドアを開けた。
「…おっ。よう!早かったな!」
意識不明の重体のハズの父さんがベッドの上で呑気にあぐらをかいてDS(ゲーム)をしていた。
僕が思っていた光景とはあまりにも違いすぎて、ずっこけてしまった。
「……なにやってるのさ」
冷たい床に勢いよく打ち付けた鼻をさすりながら訊いてみた。今すぐにでも奴の胸倉をつかみあげたい気分だったが、ぐっと堪える。
「え?これ?閃乱カ●ラっていうの、知ってる?爆乳格闘ゲームのやつ」
「いや、知らないけど……ていうか、なんで入院してるの?」
「ふっ……この新キャラもよいお乳をしていらっしゃる」
「聞いてよ!?」
「……ん?ああ悪い悪い。で、何?」
……。
僕は無言で父さんのベッドの前まで来て、台の上にある果物の横の果物ナイフを手にとった。
「ちょっ!?冗談だってッ!ごめんなさい!ふざけてごめんなさい!」
息子に必死で土下座する中年男……これが親だと思うと泣けてくる。
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