平穏な日常の終わりと波乱な日常の始まり

5/15
前へ
/15ページ
次へ
病院から追い出された僕は仕方なく家に帰ることにした。 「ただいまー」 家の中に入ると同時に、トタトタと女神の足音が聞こえてくる。 「…お父さん大丈夫だった……?」 心配そうな表情で尋ねる姉さんにグッとキタ。 あなたが神ですか 「うん、大丈夫だったよ……浮気で女の人に刺されたらしいけど、普通に元気だったよ」 最初は刺されたと訊いて心配したが、会って解った。父さんみたいなのはゴキみたくしぶとく生きそうだ。 「お父さんも懲りないね……」 そう言って姉さんは呆れたようにため息をついた。 「あき君はお父さんみたいになっちゃだめなんだよ?…というか、お婿さんになんか行かせないんだから!あき君は私が一生お世話するの」 あ な た が 神 で す か ……危うく発情しそうになる。 姉さんの言葉はいちいち破壊力がハンパない。 「大丈夫だよ、父さんみたいな大人にはならないし……それに、僕は…姉さん一筋だから……」 「あき君……」 顔を赤くした姉さんが目を輝かせる。 「姉さん…」 どちらかともなく互いの顔が近付く…… 「だ、だめなんだよ……私たちは姉弟なんだから……」 姉さんが思いとどまったように顔を背ける。 そうだ……僕らは姉弟だ。僕と姉さんは血がつながっている。偽りじゃない本当にだ。 だから、父さんのあの言葉は世迷い言だ。一度、殺されかけて狂ったんだ。 「…………」 しかし、姉さんの表情が寂しそうに見えるのは気のせいだろうか…… そんな表情をされたら『もしも血がつながっていなかったら』と、そんな邪な、都合のいいことを考えてしまう。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

233人が本棚に入れています
本棚に追加