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病院から追い出された僕は仕方なく家に帰ることにした。
「ただいまー」
家の中に入ると同時に、トタトタと女神の足音が聞こえてくる。
「…お父さん大丈夫だった……?」
心配そうな表情で尋ねる姉さんにグッとキタ。
あなたが神ですか
「うん、大丈夫だったよ……浮気で女の人に刺されたらしいけど、普通に元気だったよ」
最初は刺されたと訊いて心配したが、会って解った。父さんみたいなのはゴキみたくしぶとく生きそうだ。
「お父さんも懲りないね……」
そう言って姉さんは呆れたようにため息をついた。
「あき君はお父さんみたいになっちゃだめなんだよ?…というか、お婿さんになんか行かせないんだから!あき君は私が一生お世話するの」
あ な た が 神 で す か
……危うく発情しそうになる。
姉さんの言葉はいちいち破壊力がハンパない。
「大丈夫だよ、父さんみたいな大人にはならないし……それに、僕は…姉さん一筋だから……」
「あき君……」
顔を赤くした姉さんが目を輝かせる。
「姉さん…」
どちらかともなく互いの顔が近付く……
「だ、だめなんだよ……私たちは姉弟なんだから……」
姉さんが思いとどまったように顔を背ける。
そうだ……僕らは姉弟だ。僕と姉さんは血がつながっている。偽りじゃない本当にだ。
だから、父さんのあの言葉は世迷い言だ。一度、殺されかけて狂ったんだ。
「…………」
しかし、姉さんの表情が寂しそうに見えるのは気のせいだろうか……
そんな表情をされたら『もしも血がつながっていなかったら』と、そんな邪な、都合のいいことを考えてしまう。
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