可もなく不可もなく

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  俺はその日、彼女の店にいた。 「キョウさんー、なにかする事無いー?」 カフェテーブルに突っ伏しながらそう聞いた。 「んー? ちょいと待ちなー」 そう言って本棚の整理を再開する。 夏真っ盛り… 金を使わずに過ごせる避暑地は、ここ位しか知らなかった。 「朽葉さんは学業と仕事で暇ないそうだし、笠森さんはバイトで忙しいようだし、家の娘達は夏休み中海で遊んでるようでさ……」 「つまりぼっちか」 「はっきり言わんといて下さい…」 テーブルが涙で濡れそうだ… 「これで整理終了っと、さて、お前さん暇なら仕事しないかい?」 「……仕事? キョウさんからの依頼って初めてな気が」 「まぁそうだねぇ、基本私の仕事は横繋がりが全く無いからね、お前さんも判ってるだろ? 世界は4つに分かれているのを」 彼女の言う4つの世界とは、日常、政治、金銭、それと異常者達の世界の事だろう。 「この仕事はそことは全く関係しない仕事だよ、どうだい?」 「ふーん…、どんな内容?」 「簡単さ、金目な物を取ってくるだけよ」 「泥棒の真似事? それはやだよ」 「違う違う、あんたに頼むのはトレジャーハントだよ、遺跡関係を探索してめぼしい物を集める、簡単でしょ?」 「任務期間は?」 「フリーよ、一日だけでも良いし、この夏休み中いっぱいでも良し」 「報酬は?」 「完全歩合に現物支給、あとはアドバイザーとしてあたしの遣いを一人か二人貸してあげる」 「取ってくる物の指定は無し?」 「無し、価値の度合いとかは遣いに聞いて」 これなら断る理由も無い。 夏休みは暇だし、夏の間ハントしてるのも良いかもしれない。 「その話乗った」 「契約成立ね、じゃあこっちきて」 彼女に誘われるまま、店の奥に入った。  
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