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眠る直前にありがちな、雑な思考。考えていることに連続性があるようなないような、雑多な転換。
そこに、由奈の言葉が来る。
「じゃあさ……私たちは、いつまで幼なじみなのかな?」
「…………」
質問の意図を掴みきれない。いつまで?そりゃ、いつまでもそうでしょ。幼なじみっていう関係は、時間の積み重ねでできるものだ。だからこれからいつまで時間が経とうとも、その関係に変化はないはずで、仮にあるとすればそれは、僕らがあえて幼なじみ以外の関係へと明確に変わろうとしたときだけで、だけどそんな関係なんて数えるくらいしかなくて……あぁ、つまり。由奈が言いたいのは、最近僕が考えていたことと同じなのか。
うんざりするほどまとまらない思考で、ようやくそこにたどり着く。と同時に、由奈がそれを口にした。
「私たち……幼なじみのままで、いいのかな?」
さすが、と思った。
さすが、お互い様な僕ら。悩んでる内容がお互い様なら、そこに答えが見つけられないのもお互い様だ。
「……さぁ、どうなんだろうね」
そう答えるしかない。僕だってそれには悩んで、考えて、だけど答えは持ってない。
それでも。続く言葉が、あった。
「今さ。由奈に、膝まくらしてもらってるよね」
思考なんてものはない。ただ微睡みに身を任せて、考えるより先に言葉を放つ。
「う、うん……それで?」
促しの声に、応える。微睡みという深海から、泡沫のように浮かび上がる言葉の飛沫を口にする。
「膝まくらなんて、初めてだよね?」
「そうだねっ。るーくんとの思い出なら、全部覚えてるから間違いないよっ」
恥ずかしいことを言うやつ。けど、やっぱりそれもお互い様だから笑えない。
そんなことを考えながら、言葉は止まらない。
「てことはさ。僕らの関係は、今少しだけ、変わったと思うんだ」
幼なじみであるのは間違いない。だけど、さっきまでの僕らは『膝まくらをしたことがない幼なじみ』で、今の僕らは『膝まくらをしたことがある幼なじみ』だ。
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