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「なんだよ、何がわかってないんだよ」
少しムッとした声が出た。ちょっと子どもっぽくて情けない気もしたけど、由奈相手に気取っても仕方ない気もするからいいや。
「何って?るーくん、それはね……私という人間を、だよ!」
えへん。胸を張る由奈。……えー、ところで。話はそれるけど、季節は四月。寒かった冬はなりを潜め、それに比例して、街行く人々の服装は薄着になっていまして、それは由奈も同じで。それによってこう、背丈のわりには豊かなこう、なに、もにょもにょが主張されてこう、「……ちょっと、るーくん?どこを見てるのかな?」「僕らの、輝かしい未来を夢見てた」誤魔化した。
「……えっち」
しかし、由奈のジト目を見る限り誤魔化せてないので、
「で、由奈のことが分かってないって……どういうこと?」
無理矢理、話を進めることにした。
「……すけべ。でも、るーくんになら見られてもいいけどっ」
いいのか、という突っ込みは、胸中に留めておこう。どちらかというと、独り言っぽかったし。ていうか、話を進めたいし。
その旨を視線で伝えると、由奈は「そうそう」と頷いて。
「るーくん、さっき準備って言ったけど。お花見に必要なものって、なにがあるかなっ?」
「え?うーん……」
改めて聞かれると、パッと出てくるものは少ないけど……
「まあ、レジャーシートとか」
「はい、レジャーシート」
「!?」
え、今、何が起きた!?なんか一瞬で、由奈の両手にシートが出現したんだけど!?
「ちょ、え、えぇ……?由奈、今のは……?」
「ふっふっふー」
動揺する僕に、ご満悦な笑みを浮かべる由奈。めっちゃどや顔である。……やべ、少しムカつく。
「レジャーシート以外には……お弁当とか」
「はい、お弁当」
「!?」
なんだ?どこから出現しているんだ?見る限り、由奈は手ぶら……あ、いや、そうか!
「リュックサックか!」
「さぁっすがるーくん、大正解!」
ぴょこん、と跳び跳ねるようにしながら、由奈が後ろを向くとそこには確かにリュックが。なるほど、僕に言われたものをあそこから出していたわけだ。いや、納得納得……え、納得していいのか、これ?
だって背負ったリュックから、手探りで、視認できない早さで特定のものを取り出すって、そんなの無理じゃないだろうか?
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