お互い様な僕ら

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「?るーくん、どうかした?」 しかし、当人である由奈は首を傾げている。特に、なにも思うところはないらしい。 「いや、なんでもない……」 昔から基本ドジなクセに、なんか変なところで変な才能を発揮するやつだからな。たぶん、今回のもそういう部類なんだろう。 とかなんとか考えてなんとか納得する僕に、由奈は「そう?」と相づちした上で。 「でもでも、これでわかったでしょっ?るーくんが、私をわかってないって言ったわけ」 上目使いで、そう尋ねてきた。僕にだけ時々見せてくれる、甘えたような視線の使い方。……一瞬、トキメキだけで死ぬかと思った。いや、わりと本気で。 直視しているのは危険なので、視線をそらしつつ言う。 「悪かったよ。確かに由奈は、僕が思うより用意周到だった」 欲を言うなら、なぜその用意の項目に『僕へ事前に連絡する』というのがないのかを尋ねたいけどそれはさておき。 「じゃあ、着替えてくるから少し待ってて」 「うん、お邪魔しまーす」 待っててといわれて、玄関でなく当たり前にリビングへと足を運ぶ由奈の姿は、幼なじみならではかもしれない。 お互いにお互いの家は出入り自由みたいなものだし、知り尽くしてる。 「……と、そうだ。ひとつだけ聞き忘れたことが」 「ん?なになに?」 僕は階段に足をかけながら。由奈はリビングへと歩みながら。お互いに背を向けて、言葉のやり取り。 「いや、お花見の場所はどこなのかなと思って。あれだけ用意周到なんだから、決まってるんでしょ?」 「…………」 うわー、なんだろうこの沈黙。姿は見えないのに、ピシッと身体を固まらせて冷や汗をかく由奈の姿が鮮明に浮かぶんだけど。
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