お互い様な僕ら

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「え、あの……由奈?」 「な、なにかな、るーくん?」 「や、だから場所――」 「わー大変、私いま、『リビングに入らないと死んじゃう病』の病状が出てるかもー。死ぬー、死んじゃうー」 「…………」 棒読みの台詞と、どたばたという足音。いやぁ、言葉を選ばず言わせてもらうなら、 「馬鹿だなぁ、アイツ」 「だ、誰がだー!いいから、早く着替えてきなよっ」 リビングからの抗議に背中を押されて、階段を駆ける。自然と、笑みが生まれる。 アイツが馬鹿っていうのは本音だけど。僕の笑顔の栄養素の大半が、その馬鹿であるっていうのも真実で。 今さら、口に出すことでもなくて。口にしなくても、伝わってることだけど。 やっぱり僕は、由奈のことが好きなんだろうなぁ――なんて。 恥ずかしい思考を振り切るように、階段の最後の三段を一歩で飛び越えた。
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