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鈍くて嫌な音がした
時刻は夕方に差し掛かろうとしているが、コンクリートは日中の陽射しで熱くなっているが、今の僕にはそんなことを気にする余裕もない
空を見つめようとするが、視界はボヤけてあまり良く見えない
身体は硬いコンクリートに打ち付けられ、至る場所から血が溢れ出ているが最早痛みすら感じなかった
「梓希!」
僕の名前を呼ぶ声が聞こえる
良かった。まだ耳は大丈夫な様だ
「どうしよう……そんな、こんなに血が……」
ボヤけて良く見えないが、優の顔は涙でぐしゃぐしゃになっているみたいだ
僕は精一杯の力を振り絞って右手を優の頬に添える
「ごめんね……優……無事で……よかっ……た……」
僕の右手を優が両手で強く握る
ピーポー、と遠くで救急車の音が聞こえる
どうやら誰かが呼んでくれたようだ
でも―――
もう身体になにも力が入らない
優の頬に添えていた手もそのまま垂れようとした
もう、瞼も開く力すら残っていなかった
「梓希、駄目!もうすぐ助かるからっ!!梓希!!」
ごめんね、優。僕はもう……
でも、これだけは
「優……好……き……」
意識が薄れてきた
この瞼も、もう開くことはないだろう
最後に君を守ることが出来て良かった
優。僕を好きでいてくれてありがとう
そしてごめんなさい。君を泣かせてしまった
もし生まれ変わったら、また……君に……
……………………………………
「え?梓希……嘘だよね……?そんな……
嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
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