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それに、優を庇ったときに僕を跳ねた車
その運転席には人が乗ってなく、人の代わりに黒い靄のようなものが運転席に広がっていたような気がする
そんなことを考えていると、アリスという少女は申し訳なさそうに僕のことをちらりと横目で見て顔を伏せ、そして僕の顔を見た
「口で説明するより見てもらったほうが早い。これを」
アリスはポケットから小さな折り畳み式の手鏡を取り出して渡してきた
「……えっと?」
「顔だ。自分の顔を見てみろ」
何故自分の顔を見なければならないのか
もしかしたら、事故の影響で顔の形が変わってたり、手術の後が思いっきり残っていたりするのだろうか
恐る恐る鏡の中の自分を見つめてみると……
「……へ?」
女の子がいた
鏡の中に見たことのない――いや、どこかで見たこともあるような女の子は、きょとんとしたように僕のことを見つめる
自分の頬をつねってみる
鏡の中の女の子も同じように自分の頬をつねる
「……ニコッ」
微笑んでみる
やはり鏡の中の女の子もまた同じように僕に微笑んでいた
自分の身体を見下ろしてみる
胸に、二つのお山がくっついていた
それを両手で掴んで揉んでみた
「んっ……あぁっ……」
手には胸を揉んだ感触が、身体には胸を揉まれた感覚が、耳からは女の子のエッチな声が聞こえた
それは、自分の口から発せられたものだった
えーっと、これは。ちょっと。いや。そんな。馬鹿な
いろんな思考が頭の中を駆け巡る
しかし、どう考えても結論は一つに導かれるわけで
……全身から汗が吹き出る
もちろん暑いからとかではない。今は夏だが、この部屋の中はそんなに暑さを感じない
むしろ背筋が凍った。これは、冷や汗だ
この『女の子』は『僕』だ
そう理解した時僕の意識はブラックアウトした
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