第三話

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「そうか……なら話は早い。 貴方のお子さんとお話がしたいのだが」 『――良いだろう。 ついて来い』  ワイルドベアは、フェイスにそう告げると比較的ゆっくりと歩きだした。 フェイスはすぐに追いつき、後ろをついていく。 しばらく歩くと、崖らしき所にポッカリと開いた洞窟の前にたどり着いた。 『ここが我が家だ、入るぞ』 「……お邪魔します」 フェイスがあちらの世界のようにそう言うと、固くなるなとワイルドベアに笑われた。  中は奥へ進むほど暗く、フェイスは断りを入れてから、手の平に火の玉を作り出す。 それを手前に翳すと、奥から少しだけ高い唸る声が聞こえた。 『すまない。 あの子は炎で襲われた為、警戒しているようだ』 「……そうだったか、悪い」 フェイスがそう言って火の玉を消すと、途端にその声は消える。 代わりに、ワイルドベア同様念話らしき物が頭に響き出した。 『アナタ、誰? 人、じゃないね』 「っ! やはり森の主の子だな、すぐに見破られたか」 『マオ、彼はお前に会いたいと言っていたんだ』 『……何で?』 また警戒した様子が子供のワイルドベア――マオに見られると、フェイスは口を開く。 「君を傷つけた奴を、懲らしめる為だ」 『――あいつら、酷いんだ。 僕らは村なんて襲って無いのに、森に僕らがいると邪魔だからかな。 村人が勝手に話を作ってさ、ギルドに討伐依頼って奴を出したみたいなんだ』 それを聞いたフェイスは、思わず苦笑する。 「ガチかよ……そいつらの名前はわかるか?」 『先程の奴らだ! あいつら、マオの爪をへし折って、討伐した証として持って帰った! 「命は取れない」等と抜かして!』 最後の、相手の台詞らしき物を聞いた瞬間、フェイスの表情が固まった。
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