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少年が目を覚ますと灰色の世界だった。
――何故こんな所にいるのだろう。
そんな事を考えながらも、彼は何故か痛む後頭部を押さえ、どうにか上半身を起こす。
「何も無いな」
辺りはどこを見ても、灰色、灰色、灰色。
吐き気がする程単純な空間だ。
(……どっかのヒーローキラー物で見た事がある。 こういう時に出てくるのは……)
しばらく辺りを見回しながら考え事をした後、少年はゆっくりと口を開く。
「邪神」
『おやおや、意外にあっさりと呼ばれるもんだ』
呼んだ彼の目の前に突如現れたのは黒い人の形をした『何か』だった。
驚きと恐怖から思わず目を見開けばその『何か』は自分の姿にようやく気がついたのか、それに色が付き始める。
茶褐色の肌、現実の人間ならありえない銀色をした長髪に赤い瞳、真っ黒い鎧のような物を身につけた、細身ながら鍛えられた、なかなかの美形だ。
『初めまして、君の名前は?』
「中野誠(なかのまこと)だ。 なぁ、こんな空間にいるって事は、僕――死んだんだろ?」
少年――中野誠があっけらかんと言い退ければ、彼の目の前にいる邪神は愉快そうに笑い、頷いた。
『ハハ、ハ……そうだよ、でもそれがあまりにも危険だったから、複数界の管理神が君をここに飛ばしたんだ』
その言葉に、誠は思わず眉間にシワを寄せる。
「複数界の、管理神?」
『そ、フィエリテって子なんだけどさ。 どうやら彼女が管理している世界の内の一つの世界神が、君のお友達(仮)をひどく気に入って、自分の世界の危機を彼に救って欲しいみたいでね?』
そこまで聞いて、彼の顔が明らかに引き攣った。
(あいつが関わって、しかも好かれた?)
その時点でもう、彼には話の続きが見えていた。
しかし、聞かないわけにはいかず黙っていれば、邪神が口を開く。
『その為には、事故で死なれたら呼べなくてね。 こちらが「異世界から」干渉しないといけないから、その世界神は君と彼の運命を入れ替えたんだ』
「っ! 僕は、あんな、バカの代わりに……!?」
彼はわざと、酷く驚いたふりをした。
実際は少し驚いた程度だった。
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