第二話

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 開けた途端、誠は夢から覚めるのと同じような感覚を覚えた。 「……何だ、夢か」 ホッとした誠は、口を開いてすぐにその声がしっくり来ない事に気づく。 明らかに低めのバリトンボイスに彼が思わず驚けば、その耳にクスクスという笑い声が入ってきた。 ……この体の人物が知っていたのだろうか。 今の誠には相手――邪神の名がわかる。 「おい……オブシディアン」 『っ! な、何かな?』 誠にまさか名を呼ばれるとは思わなかったのか、焦って返事をした邪神――オブシディアンは汗を垂らす。 おそらく冷や汗であろう。 「笑うなよ、僕だって結構笑いそうだ」 『笑いそうなの!?』 「あぁ」 誠の返答を聞いた彼は、驚いた様子のまま固まった。 (……この体の心は読めないのか? 僕が驚いたフリをした時は、無理するなって言ったのに) 誠がふと思った、その時。 『――よ、読めるよ。 気が動転していただけさ』 「何だ……読めない方が面白かったのに」 誠の口から、思わず本音が出た。 それを聞いたオブシディアンは、少し悲しそうな顔をする。 『酷いよ? 誠くん』 「その名前はやめろよオブシディアン、この体の名前で良い」 そう即答すれば、オブシディアンは少し驚いたような顔をした後、ゆっくりと口を開く。 『まさか、動く彼に――フェイスに、また会えるとは思わなかったよ』 「フェイス……それがこの体の名前か」 『そう、フェイス・サタニア、サタンの部下であり……言い忘れてたけど、彼が作り出した存在だ』 それを聞き、一瞬唖然となった後、誠は口を開く。 「何で最重要事項を後回しにした!」 『ほ、ホントに忘れてたんだってば! 君だって色々聞いてきたじゃないか!』 オブシディアンに言われ、誠は思い出す。 確かに、相手を質問攻めにしてしまった事を。 「ならすまなかった」 『うぅ、わかってくれただけ良いよ……』
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