第二話

5/9
前へ
/90ページ
次へ
 うっすら涙を浮かべていたオブシディアンを宥め終えると、誠は思考を開始した。 まずフェイスというこの人物の名前に、彼は驚いていた。 フェイス――和訳すれば『誠』である。 何かの偶然か、はたまたオブシディアンが仕組んだのか。 彼にとっては別にどちらでも問題無いから良いのだが、少し衝撃的だったようだ。  そんな事を考えていた彼だったが、突然背後に気配を感じて慌てて飛びのく。 悪魔と人では身体能力が違うのか、まあまあ距離が取れる。 先程まで誠が立っていた場所にいたのは、見た目は明らかに女性の人物だった。 彼女(?)は、オブシディアンを睨みつけながら、口を開く。 「おい、オブシディアン……人が預けたのを、何勝手に使ってやがる」 『……さ、サタン』 ……声が低いので、どうやら彼女ではなく彼だったようだ。 加えて、オブシディアンが名を呼んだ事で、この相手がフェイスを作った張本人――サタンである事が容易く理解できた。 こんな所に現れたという事は何か感じ取ったのだろう。 「――なるほど、なら仕方ねぇか……おい、転生者」 誠――もといフェイスが驚いている間に2人の会話は済んだらしく、サタンが彼に話し掛けた。 「な、何でしょうか?」 「テメェはその体の名前――フェイス・サタニアを名乗れ。 俺が許す」 『い、良いのかい?』 オブシディアンがそう尋ねれば、サタンは再び彼を睨んで口を開く。 「今更何言ったっておせぇだろ。 もう魂は体に定着してやがるようだしな……曲がりなりにも神であるお前が、気づいてないわけが無いと思ったんだが」 『……ハハ、やっぱりサタンには敵わないな。 その通りだよ、一応神様だしね』 そう言うオブシディアンは、満面の笑みを浮かべていた。 フェイスは思わず俯き、ため息を吐く。 顔をあげれば、サタンと目が合った。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

593人が本棚に入れています
本棚に追加