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うっすら涙を浮かべていたオブシディアンを宥め終えると、誠は思考を開始した。
まずフェイスというこの人物の名前に、彼は驚いていた。
フェイス――和訳すれば『誠』である。
何かの偶然か、はたまたオブシディアンが仕組んだのか。
彼にとっては別にどちらでも問題無いから良いのだが、少し衝撃的だったようだ。
そんな事を考えていた彼だったが、突然背後に気配を感じて慌てて飛びのく。
悪魔と人では身体能力が違うのか、まあまあ距離が取れる。
先程まで誠が立っていた場所にいたのは、見た目は明らかに女性の人物だった。
彼女(?)は、オブシディアンを睨みつけながら、口を開く。
「おい、オブシディアン……人が預けたのを、何勝手に使ってやがる」
『……さ、サタン』
……声が低いので、どうやら彼女ではなく彼だったようだ。
加えて、オブシディアンが名を呼んだ事で、この相手がフェイスを作った張本人――サタンである事が容易く理解できた。
こんな所に現れたという事は何か感じ取ったのだろう。
「――なるほど、なら仕方ねぇか……おい、転生者」
誠――もといフェイスが驚いている間に2人の会話は済んだらしく、サタンが彼に話し掛けた。
「な、何でしょうか?」
「テメェはその体の名前――フェイス・サタニアを名乗れ。 俺が許す」
『い、良いのかい?』
オブシディアンがそう尋ねれば、サタンは再び彼を睨んで口を開く。
「今更何言ったっておせぇだろ。 もう魂は体に定着してやがるようだしな……曲がりなりにも神であるお前が、気づいてないわけが無いと思ったんだが」
『……ハハ、やっぱりサタンには敵わないな。 その通りだよ、一応神様だしね』
そう言うオブシディアンは、満面の笑みを浮かべていた。
フェイスは思わず俯き、ため息を吐く。
顔をあげれば、サタンと目が合った。
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