pain 02 堕罪の夜

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商学部の試験は、その大部分が持ちこみが可能となっている。 テキスト、ノート、何を持ちこんでも構わない。 そのため、体調不良などで休んだ際の講義ぶんのノートを誰かに借りて、コピーを取らせてもらうという作業が必要となる。 1年時の必修だった、第2外国語で親しくなったという男性から由梨がルーズリーフを借りてきた。 第2外国語は私は中国語で、由梨はイタリア語と、互いに別のを選んだから、その男性がどんな人なのか簡単に伝え聞くだけだ。 けど、こんなふうに貸してくれるということは、相当打ち解けているのではないだろうか。 美馬翔太以上に。 「え、まだなの?」 「ちょっと、声が大きいって」 由梨にたしなめられて、ごめん、と謝ってキャラメルマキアートを口に含む。 講義内容をきれいに書き記したルーズリーフをコピーしたあと、カフェテリアで涼んでいた。 一昨年に完成した、学内で一番新しい9号館の1階に位置するカフェテリアは、広々としたスペースに全面ガラス張りで、2階までの吹き抜けになっているためか、明るく開放的な雰囲気だ。 創立以来の建物の原型をそのままとどめているという、学食と比較にならないほどこじゃれている。 ドリンクメニューがやたら揃い、サンドイッチなどの軽食も扱っている。 それが絶賛するほどおいしいためか、女子学生に圧倒的な人気を誇るスポットだ。 午前中だろうが、昼食時だろうが、時間帯に関係なく混雑していて、話し声や笑い声が絶え間なく響き渡る。
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