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「ゲットしちゃいました」
「ゲット?」
何を、なのかわかっているはずなのに、オウム返しをしてしまう。
「わかってるくせに。美馬翔太のアドレスを、よ」
「ほんと?」
「嘘なんかつかないって」
由梨は誇らしげな笑みを浮かべる。
美馬翔太といえば、この間の合コンでその整った容姿を武器に、女子の圧倒的人気をかっさらった男だ。
そんな彼のアドレスとなれば、争奪戦がくり広げられるのは必至。
美馬翔太のハートをゲットすべく、あの場にいた女子ども全員の、我こそは、とギラギラと野心に燃え火花を散らしつつ、牽制しつつの争いを遠巻きに眺めていた由梨は、はなから逃げ腰の体制で、負けは目に見えていたとばかり思っていたのに。
ますます興味が沸く。
これはどういう経緯でそうなったのか、きっちりと問い詰めなければ。
もはや、講義どころではない。
「ちょっと、どういうこと? 詳しく教えなさいよ」
「そう興奮しないでよ。私のほうがまだ信じられないんだから」
ぱっと赤らんだ頬を由梨は両手で覆う。
恥じるようなその素振りは、なんだか初々しさを感じさせる。
由梨の恋を思わず応援したくなる。
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