23人が本棚に入れています
本棚に追加
携帯が砂川くんからの着信を告げる。
メールのやりとりが多かったのに、着信なんて珍しい。
そう思いながら受話ボタンを押す。
「もしもし」
『こんばんは。今、大丈夫かな?』
「大丈夫ですよ」
冒頭に律儀に都合を確認してくるあたり、礼儀の正しい人だ。
メールのやり取りでもそうだけど、砂川くんからはタメでいいと言われている。
だけど、ひとつ上というのをどうしても意識してしまって、いまだに敬語から抜けだせずにいる。
『まだ敬語だね』
「すみません」
『いいけどね、べつに』
砂川くんは電話越しにけらけらと明るく笑う。
『でさ、聞いた、かな? 友だちから翔太と遊びに行こうって話』
やっぱり、と思う。
4人目は砂川くんだろうというのは、かすかに予感がしていた。
美馬翔太の友人を考えた場合――彼の交友範囲など知るよしもないけど――合コンに誘うくらい仲のいい彼だろうと、彼であればいいと、そう思っていた。
「ええ、今日。でも、どうして相手が私だって知ってるんですか?」
いたって大真面目に訊いたつもりだったのに、いきなり砂川くんが大声で笑いだす。
何もおかしなことは言っていない、はず。
最初のコメントを投稿しよう!