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義理の弟へ恋心を抱いて、気分が塞がっているから行きたい気持ちにはなれません、なんて口が裂けても言えない。
それなら、なおさら外に出てリフレッシュしようよ、なんて言いだされかねない。
『俺は寧々ちゃんと行けたら大歓迎だよ』
「考えときます……」
心に翳を落とすものがある以上、声は暗くなる。
『寧々ちゃん、やっぱり俺思うんだ』
砂川くんの声のトーンが、電話越しでもわかるほどに急に明るく変化した。
何を言いだすのかと思って、携帯を強く握りしめて身構える。
『やっぱり、敬語はなしにしようよ、俺らの間では』
「え、でも、それはいきなりは無理です」
『……そっかあ。じゃあ、こういうのはどう? 俺のこと、“圭介”って呼んでよ。いつまでも“砂川くん”じゃあ他人行儀だし』
「え?」
思ってもみない提案に思わず目をしばたたかせる。
年上の人を名前で呼び捨てにするなんて、そんなのできるわけがない。
敬語から抜けだすよりもハードルが上がってやしないだろうか。
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