pain 01 封印の影

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義理の弟へ恋心を抱いて、気分が塞がっているから行きたい気持ちにはなれません、なんて口が裂けても言えない。 それなら、なおさら外に出てリフレッシュしようよ、なんて言いだされかねない。 『俺は寧々ちゃんと行けたら大歓迎だよ』 「考えときます……」 心に翳を落とすものがある以上、声は暗くなる。 『寧々ちゃん、やっぱり俺思うんだ』 砂川くんの声のトーンが、電話越しでもわかるほどに急に明るく変化した。 何を言いだすのかと思って、携帯を強く握りしめて身構える。 『やっぱり、敬語はなしにしようよ、俺らの間では』 「え、でも、それはいきなりは無理です」 『……そっかあ。じゃあ、こういうのはどう? 俺のこと、“圭介”って呼んでよ。いつまでも“砂川くん”じゃあ他人行儀だし』 「え?」 思ってもみない提案に思わず目をしばたたかせる。 年上の人を名前で呼び捨てにするなんて、そんなのできるわけがない。 敬語から抜けだすよりもハードルが上がってやしないだろうか。
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