pain 01 封印の影

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かっこいい。 確かに、かっこいい。 それは素直に認める。 認めるけど、私の好みとはかけ離れている。 ああいう、俗にいうイケてるメンズは遠くから眺めるだけで十分。 ……なんて、そんなばかげたことは言わない。 言わないけど……。 そこまで考えたところで、ふいに視線が合ってしまった。 由梨好みのイケメンくんと、じゃない。 その隣にいる、厭味なくさらりとさまになっている、白いポロシャツを身につけた男性と、だ。 スマートショートの黒髪がさわやかさをより印象づける。 私としてはイケメンくんを見ていたつもりが、彼は自分が見られているといらぬ誤解をしてしまったらしい。 はにかんだような笑顔を浮かべて、ひょっこりと会釈をしてきた。 あ、笑顔はかわいいかも。 つられるように頭だけ下げると、彼は照れくさそうに後頭部に手をやった。 いや、本気で照れているのかもしれない。 今どき純情なことで。 変に感心しつつ、傍らに置かれてあるフードのメニューを広げた。
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