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かろうじて空いていた壁際のテーブル席を確保して、コピーしたばかりの用紙を整理しながら並べていた手が止まる。
圭介くんと、由梨と、美馬翔太という奇妙な組みあわせで出かけて以来、初めて顔を合わせる。
2人きりにして残したあと、どうなったのか、面白半分で訊いてみた。
それが意外な顛末だった。
手はなんとか握ったものの、キスには至っていないという。
キスどころか、情事にまで及んでしまった私はどうなる。
いや、スピードが云々言うつもりはない。
見るからに、女と遊びまくっているであろう、あの美馬翔太が手を握っただけというのは、どういうことだろう。
それがおかしい。
まったくもって不可解だ。
謎が深まるばかり。
「どうしてよ? なんでよ?」
「んー、なんでだろう」
わかんないよね、と閉口する。
途方に暮れているようだ。
たぶん、由梨もキスくらいまでなら許す気でいたのだろう。
唇同士を触れあわせるキスが境界線。
それ以上を求められたら、早急な印象を受ける。
あの美馬翔太なら、手を出しかねないだろうけど。
「由梨としてはどう思ってるの?」
「どうって?」
「美馬翔太の彼女になりたいかってことよ」
「それはもちろん」
でもなあ、と唇を尖らせて、アイスカフェモカの入ったプラスチックのカップに指を伸ばす。
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