pain 01 封印の影

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「ねえ、聞いてよ」 双方ともに同じ講義をとっているマーケティング論で、砂川くんに出会った合コンの時以来、初めて由梨と顔を合わせた時だった。 学内でもかなり大きな講義室で、並んでいる机は階段形式になっている。 必修でもあるので受講している学生は多く、壇上の教授もマイクを使いながら講義を進めている。 マイクを通した教授の声の大きさにも負けないくらい、由梨の声は弾んでいた。 この声の明るさ加減、絶対に何かあったに違いない。 確信する。 私はあの合コンを気分が優れないとかと適当に理由をつけて、お開きになるや否や、由梨とは居酒屋の前で別れた。 由梨はその後に続く二次会にそのまま流れたのだろう。 まさか、そこで何か思わぬハプニングがあったのだろうか。 いつもはチャンスをものにできない由梨に俄然、興味が沸く。 由梨は大事な話はメールで伝えずに、直接会って伝えたがる性分だというのは、2年間の友人関係をやっているうちに徐々に知りえた。 だから、こうやって会うまでもったいつけていたに違いない。 マーケティングの基本はヒト、モノ、カネ云々……と教授が話す退屈でしかない講義なんかより、由梨の話を聞くほうがよっぽど心惹かれる。 「何? どうしたの?」 「実はね」 こほんと咳払いを挟む由梨をもどかしく思いながら、早く続きを、と急かしたくなるのをこらえる。
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