1人が本棚に入れています
本棚に追加
源平争乱を終らせ、北條政子──茶吉尼天を追って望美の世界へ来たオレたちは茶吉尼天を倒した。
そのすこし後、ある理由で乱れた此方の世界の龍脈も正した。そして気が正され、望美との別れが近付いていた。想いが通じてすぐの、別れ。少し、残念だ。出来るならば残りたい。だが、熊野の棟梁であるオレが帰らないわけにはいかない。逸そ、この身を二つに分けられたなら、と、そんなことを思いながら毎日が過ぎて行く。
そんなある日の夕方。
「もうすぐ、帰っちゃうだよね……」
散歩の帰り道で隣の望美が言った。
「ああ……」
数日。そう、後、数日で気が完全に整う。そうなればオレは九郎たちと元の世界へ帰らなくてはならない。オレたちはこの世界の人間ではなく、異なる世界から来た存在だから。
「ヒノエくんとも、会えなくなっちゃうね……寂しいよ……」
望美が繋いだ手を強く握った。オレが望美を見ると、望美はうつ向いて、いつもは明るく輝いている表情に影があった。寂しそうなうな印象を受ける。
最初のコメントを投稿しよう!