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置いて行きたくない。
帰るならば連れて帰りたい。帰りたくない。だが、帰りたい。オレは帰らなくてはいけない。オレの帰りを待つ皆がいるから。
オレが帰らなければ誰が熊野を治め、守るのか。誰があいつらをまとめる。……親父は引退してるし、“伯父”は“あれ”だ。しかも源氏の軍師。とてもじゃないが頼めない。だからオレが帰らなくてはならない。オレにとっては熊野も望美と同じくらい大切なものだ。捨てるわけにはいかなかった。なのに。
「お、嬉しいことを言ってくれるね、神子姫様。
…オレもお前に会えなくのは悲しいよ」
嘘ではない。いつもの軽い言葉じゃなく、本当に。望美と会えなくのは辛い。別れが近付けば近付くほど、その気持ちは強くなって行く。
まさかオレが一人の女にこんな執着するなんて思いもしなかった。誰かを本気で好きになることがあるなんて。
「ヒノエくん、明日暇……? 暇だったら一緒に何処か行かない? 会えなくなる前に一日、ヒノエくんと何処かに行きたいな」
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