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「明日、か……」
いつもだったら断らない。だが、一日を一緒に過ごせば余計に別れが辛くなるであろうことは分かっている。どう、答えるか。
「うん。ダメ、かな……?」
望美が不安げにオレを見つめる。望美の擦んだ翡翠の瞳が真っ直ぐにオレを写す。
「……オレがお前の誘いを断わるわけないだろう?」
断われなかった。どうしても。望美の誘いだけは断わることが出来ない。他の女だったら断われるのに。
やっぱりオレは望美が好きなのか。本気、なんだ。
……だからオレは。
「本当!? じゃあ、明日迎えに行くね」
「ああ、分かった」
明日の約束を交し、オレたちは望美の家へ向けて歩を進めた。たわいもない話を交しながら、笑顔を見せる望美と。
そして、望美の家が見え始めた。
「じゃあ…明日! 忘れないでね?」
「オレが約束を破るわけないじゃないか。明日、な」
「あはは。そうだね。また、明日」
望美が自宅へ向かって駆け出し、オレは少し後ろを歩いた。その時。
『危ない!』
「え?」
何処からか声がして望美が立ち止まる。
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